二兄は車いすを家にしまうとき
電気カーペットの
コンセントのコードの上に
車いすのしゃりんが
踏んでいても気にしない
自分はいつも
コードを踏んじゃうと
断線しちゃうかもしれないから
コードをよけるようにして
車輪をズラして置くようにしている
床がぺこぺこしてて
踏むと軋んで音がする
ヘタしたらフローリングの床が
割れるかもしれないから
そこを踏まないようにして歩くけど
二兄は気にせずに
ガシガシ普通に歩く
そのたびにフローリングの床がきしむ
床が割れてしまうような音が
するが気にしない
そういう鈍感さが
もう合わない
でもこれはしょうがない
そういう星の元に
生まれたんだから
諦めるしかない
仕事終わりに
品川に行ってATMに記帳して
電車に乗って帰ったけど
間違えて
逆方向の電車に乗ってしまった
疲れているのかもしれない
多元宇宙は永久に広がる
っていう設定が本当なら
マルチバースの別の宇宙に
今と違う自分が存在して
今と違う環境で
今と違う性格で
生きているんだろうけど
その自分と対話出来たら
きっと面白いのにと思う
善な自分と
悪な自分もいるかもしれない
そういうのを考えるだけで
現実逃避できて楽しい
今とは違う自分はどんなだろうか
価値観も全然違う自分
二兄のようなことをしても
全く気にならない自分も
どこか別の宇宙にいるんだろうけど
今ごろ何を考えて生きているのか
あるいは宇宙が一巡している
っていう考えもあって
今体験したことは
1巡前の自分も体験している
それは無限に繰り返されてて
数億年後に
地球が消えて太陽が消滅して
宇宙が崩壊して
また宇宙ができて
太陽ができて
地球ができて
自分が生まれて
同じようなことを
体験して
死んでを繰り返してる
だとしたら
今は何巡目だろうか
1巡前の自分も
同じことを考えてたのか
よく分からないけど
よく分からないまま
そのうち死んでいく
夕飯は二兄がスペアリブを作ってた
仕事中は
なんとなしに
エブエブのウェイモンド・ワンみたいな
感じで過ごしてた